夢をあきらめる勇気

夢はあきらめなければ叶う。
夢は抱き続けることが大切だ。

多くの著名人が口を揃えて言う。

子供の頃には漠然と聞いていたその言葉も、大人になってからは一段と重みを増した。

夢を見ないことへの非難。あるいは夢を諦めることへの非難。世の中に流通する名言や自己啓発本からは、そういった叱咤激励が聞こえてくる。

私も例に漏れず、叶えたい夢なら諦めてはいけないと思っていたし、夢は叶えてこそ意味があると思っていた。

実際それは違ったわけだけれど。

少し私自身の話になる。

私は夢のない幼少期を送っていた。幼稚園の短冊に書く願いごとも、学校の文集に書く将来の夢も、考えて考えて思いつかず、結局適当なことを書いていた。

なりたいものなどなく、やりたいこともなかった。

決して捻くれた子供というわけではなかったと思う。要は毎日が満たされていたのだ。先の夢など考える必要がなかった。

夢に直面することになったのは社会人になってから。

社会人ちょうど3年目。私は本能的に、「そろそろ何者かにならなければ」と考えた。

焦りからだろう。将来の結婚、出産、そして仕事。これから先どうやって生きていけばいいのか。いつ、どこで、何に対して、人生を費やせばいいのか。手に取った本のタイトルは「10年先を考える女性はうまくいく」。

計画的に生きなければ、結婚も、出産も、仕事も、すべてがままならなくなるという恐怖があった。

そのような中、紆余曲折の自分探しの果てに、私は夢を見つけた。

「個人事業主」だ。

いつからか、富士の湖畔の、(実在するか分からない)カフェでノートパソコンを開く自分の姿が、頭から離れなくなった。

個人事業主になるには専門分野が必要だ。専門分野に通ずるには、さしたるツテもスキルもない私には資格や肩書きが必要だ。

毎日自己分析ノートに向き合い考え続けた結果、私は「キャリアコンサルタント」というキャリアの専門家になり、経験を積んで個人事業主になるのだと決意した。

それが今から4年前の話である。

私はその決意通りに人材会社に転職し、キャリアコンサルタントとなった。それが2年前。

そして今。私はその夢をあきらめようとしている。

何ということはない。人材業界におけるキャリアコンサルタントは、私の趣向にあまり合っていなかった。単純に、内から情熱が沸き上がらないのである。

カウンセリングは好きだ。けれど、人材ビジネスにおけるキャリアコンサルタントは、想像以上に地道なデスクワークを必要とし、想像以上に自分の得意領域を活かせず、そして、想像以上に営業職だった。

それでも、4年間は見た夢の姿だ。

今耐えれば、もっと頑張れば、ずっとあきらめなければ。

何かが見えてくるはずだと、思わないわけではなかった。

けれど「私にはもっとワクワクできることがある」「やりたいことがある」「やれることがある」という想いが止まらない。

そう思うと、やはり「ここ」は「違う」のだと、結論付けせざるを得なかった。

だから私は、「キャリアコンサルタントとして個人事業主になる」という夢をあきらめることにした。

やっと掴んだ夢の端が、想像以上に自分に不向きで納得感が得られないことを、自分で自分に認めさせるのは、時間がかかった。

4年越しの夢ならまだ生易しいほうだろう。10年越しの夢、20年越しの夢が、辿り着いた果てに手にしたものが「違う」としたら。

それをあきらめることは出来るだろうか。

別の道を選ぶことは出来るだろうか。

それはきっと、覚悟がいることだ。

一途に夢を抱き続け、あきらめずに努力し続け、叶った結果がハッピーエンドとは限らない。ハッピーエンドにならなかったとしても、その夢に捧げた時間は戻らない。

だから私たちは、夢に対するスタンスをもう少し柔軟にする必要があるのだと思う。

たくさんの小さな夢を持つこと。

小さな夢をたくさん叶えてみること。

叶えたものを「違う」と感じたらあきらめること。

あきらめたら、また違う夢を探すこと。

必ずしも、某野球選手のように、幼少期に決めた夢を追い求め続けることが正解ではない。

子供の頃の夢は、子供の自分の価値観が織り上げた夢だ。

学生時代の夢は、社会を知らない自分の価値観が創り出した夢だ。

転職先に対する夢は、転職先を知らない自分が見る夢だ。

「今の自分」が叶えたがっているものに、耳を傾けること。

少し想像するだけで、やってみたいことが、たくさんある。

会いたい人が、たくさんいる。

行きたい場所が、たくさんある。

頭に浮かぶ限りの「小さな今の夢」を、出来るだけたくさん、叶え続けること。

多くの夢を叶えた先に、「本物」との出会いがあると信じて。

ちなみに、私はキャリアコンサルタントとしての独立はあきらめたが、富士の湖畔の、あるかどうか分からないカフェでパソコンを開き仕事をする、という夢はまだあきらめていない。

というより、叶えていない。まだ未消化の夢というわけだ。

この夢も、自分自身のために早く叶えてあげたいと思っている。なぜなら、叶えてみたら案外「違う」と感じて、今度はフランスの郊外で仕事する自分を夢に見るかもしれないから。

こんにちは、2017年の私。私は今、2021年12月にいます。

入社した人材紹介会社で自己肯定感がボロボロになり、夢さえもあきらめると決め私。きっとさぞ辛かったと思います。これ以上傷付かずにやり過ごすために、「夢をあきらめる」というのは勇気が要るうえに、悲しみを伴う決断だったことでしょう。

あなたがその記事を書いてからちょうど一年後、私はその会社を退職しました。一ヶ月間分の有給休暇を使い、10日間かけて日本全国を青春18切符で旅行しましたよ。あのワクワクした感じは学生時代以来でした。

そしてキャリアコンサルタントの資格もとりました。キャリアコンサルタントの養成講座で学んでみて気がついたのは、人材紹介会社のキャリアアドバイザーと、専門職としてのキャリアコンサルタントは別物だったということです。

あなたは養成講座に通い、そこでさまざまな人と出会い、講座を通して自分の人生を見つめ直すことで、一度は捨ててしまった夢を、再び拾い直すことを決めました。

あなたは、夢をあきらめて捨てたつもりだったかもしれませんが、それはずっと足下に転がって、きらきらと光っていたんですよ。

そしてキャリアコンサルティングを学び、コーチングを学び、フリーランスとして活動し、そして2019年11月に個人事業主として起業しました。

とはいえ、会社に勤めながらの複業活動です。なので富士湖畔のカフェ(やはり実在するかどうかはわからない)で仕事をするという夢は叶っていません。フランスの郊外で仕事をするということもピンときていません(笑)

でも、素晴らしい自然の風景を見ながら仕事をするということ自体は、近々叶うと思っています。というかすでに、ちゃんと実在する理想的な場所を見つけました。そこへ行くのを、今からとても楽しみにしています。

私が個人事業主になるにあたって決めた屋号を知りたいですか?知りたくなくても教えますが、「Empower Coaching」です。

あなたはこれまでたくさん挫折してましたね。周りから強い人だと言われる陰でたくさん涙を流してきました。

でもその経験があったからこそ、多くの痛み、悲しみ、苦しみを知り、それらを受け入れることができるようになりました。お陰で今の私は、こうしていくつもの夢を抱えて、楽しく走ることができています。

今度は私が、誰かの夢を、人生をEmpowerする。そんな決意を込めてこの屋号を付けました。

2017年の私へ。あなたは常に全力でした。苦悩するにも全力、前へ進むにも全力。そんなあなたが在ったからこそ、私の道はここまで拓いてきたのです。

だから安心して、今日は美味しいものでも食べてゆっくり眠ってください。

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